タイトル(英語・日本語)
Foot strike patterns and collision forces in habitually barefoot versus shod runners
習慣的に裸足で走るランナーと靴を履いて走るランナーの足接地パターンと衝突力
ジャーナル名・発行年
Nature, 2010年1月28日発行(Vol 463, doi:10.1038/nature08723)
第一著者・最終著者(英語表記)
Daniel E. Lieberman(第一著者)、Yannis Pitsiladis(最終著者)
第一所属機関(英語表記)
Department of Human Evolutionary Biology, Harvard University, Cambridge, Massachusetts, USA
概要(Abstract)
現代のランニングシューズが登場する以前、人類は裸足またはミニマルな履物で走っていた。本研究では、習慣的に裸足で走るランナー(裸足ランナー)と靴を履くランナー(シューズランナー)の足接地パターンと衝突力を比較した。裸足ランナーは前足部(フォアフット)接地が多く、一方、シューズランナーは踵(リアフット)接地が主流であった。運動学的・運動力学的解析の結果、裸足ランナーは硬い地面でも衝突力が小さく、これは足の着地角度と足首の柔軟性によるものであると示された。フォアフット接地は衝撃による怪我のリスクを減らす可能性がある。
背景(Background)
人類は数百万年にわたり持久走を行ってきたが、現代のクッション性の高いランニングシューズが登場したのは1970年代である。現代のシューズは、主にリアフット接地を促進する構造になっている。一方、裸足でのランニングがどのように衝撃を軽減しているのかは十分に理解されていない。本研究では、裸足ランナーとシューズランナーの足接地パターンとその影響を調査した。
方法(Methods)
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被験者:
- アメリカの習慣的にシューズを履くランナー
- ケニアの裸足で育ったが現在はシューズを履くランナー
- アメリカの裸足またはミニマルシューズで走るランナー
- ケニアの裸足の中高生
- ケニアのシューズを履く中高生
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測定項目:
- 足接地パターン(フォアフット、ミッドフット、リアフット)
- 走行時の関節角度(足首、膝、股関節)
- 地面反力(衝撃力、負荷率)
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環境:
- アメリカでは屋内トラック(フォースプレート使用)
- ケニアでは屋外トラック(硬い土の路面)
結果(Results)
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足接地パターンの違い
- シューズランナーの**75-80%**がリアフット接地
- 裸足ランナーのほとんどがフォアフットまたはミッドフット接地
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衝撃力の違い
- リアフット接地(裸足): 体重の1.89倍の衝撃力
- リアフット接地(シューズあり): 体重の1.74倍の衝撃力
- フォアフット接地(裸足): 体重の0.58倍の衝撃力(リアフット接地の約1/3)
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負荷率(衝撃の速さ)
- 裸足のフォアフット接地は、裸足のリアフット接地よりも約7倍低い負荷率
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関節の違い
- フォアフット接地では着地時に足首をより屈曲(プランターフレクション)
- リアフット接地では足首の背屈が強く、着地衝撃が高まる
考察(Discussion)
- 現代のランニングシューズはリアフット接地を助長するが、裸足ではフォアフット接地が主流。
- フォアフット接地は、足首と膝の柔軟な動きにより、衝撃を低減する。
- 進化的には、裸足またはミニマルシューズでのフォアフット接地が自然なランニングフォームであり、衝撃による怪我のリスクを低減する可能性がある。
先行研究との新規性(Novelty compared to previous studies)
- 裸足ランナーとシューズランナーの詳細な運動学・運動力学的データを比較
- 裸足でのフォアフット接地が衝撃力を大幅に低減することを定量的に示した
- ミニマルシューズや裸足ランニングの利点を科学的に支持するデータを提供
限界(Limitations)
- 被験者数が限られており、大規模な調査が必要
- 走行速度や被験者の経験による影響が完全には排除されていない
- 長期間の怪我の発生率についてのデータが不足
潜在的な応用(Potential Applications)
- ランニングシューズの設計改良(ミニマルシューズの開発)
- ランニングフォームの指導に活用(フォアフット接地の推奨)
- ランニングによる怪我の予防プログラムの開発