ランニングのバイオメカニクスの変化はランニング障害と関連しているか?:システマティックレビューとメタアナリシス

Title(英語・日本語)

Are alterations in running biomechanics associated with running injuries? A systematic review with meta-analysis
ランニングのバイオメカニクスの変化はランニング障害と関連しているか?:システマティックレビューとメタアナリシス

Journal Name & Publication Year(雑誌名・出版年)

Brazilian Journal of Physical Therapy, 2023年

First and Last Authors(第一著者と最後の著者)

Alexandre Dias Lopes, Luiz Hespanhol

First Affiliations(第一所属)

Department of Physical Therapy, Movement & Rehabilitation Sciences, Northeastern University, Boston, MA, USA

Abstract(要旨)

背景:これまで、ランニング障害の予測因子としての主なバイオメカニカル変数を調査したシステマティックレビューは存在しない。
目的:ランニング関連障害と関連する主要なバイオメカニカル変数を調査すること。
方法:PubMed、EMBASE、SPORTDiscus、Web of Science、CINAHLを用いて、2021年11月1日までに発表された文献を検索。バイオメカニカル変数(運動学的、運動力学的、筋電図、圧力分布)とランニング障害との関連性を調査した研究を対象とし、Downs and Black Quality Indexにより質を評価。
結果:82研究、計5465人のランナーを対象とし、51件(2395人)から11のバイオメカニクス変数に関するメタアナリシスを実施。**唯一有意差が確認されたのは「股関節内転角(peak hip adduction angle)」**で、障害のあるランナーで有意に高かった(SMD=0.57, 95%CI 0.21–0.94)が、この結果は同一研究グループによる2研究に大きく影響されていた。
結論:バイオメカニクスの変化がランニング障害と関連しているという強い証拠は乏しい。評価条件の異質性や変数定義の不統一性が結論の難しさを生んでいる。

Background(背景)

ランニングは世界的に人気のある身体活動だが、障害の発生率も高い。ランニング障害の原因は、繰り返される微小外傷による過負荷とされることが多く、衝撃回数は1マイルあたり約1000回。解剖学的特徴やトレーニング要因(量・距離・経験)も影響するとされ、バイオメカニクスも重要な要素と考えられている。過去のレビューは特定の障害や変数に限定されていたが、本研究は広範な変数を対象とする包括的レビューである。

Methods(方法)

5つのデータベースを用いて包括的検索を実施し、PRISMAガイドラインに従って登録(PROSPERO: CRD42017068839)。
対象研究:

  • ランナー対象(スプリンター以外)
  • ランニング中のバイオメカニクス(運動学的・力学的・圧力・筋電図)評価あり
  • ランニング障害との関連を調査
  • 原著・査読付き論文
    除外:介入研究、軍訓練、画像診断のみの研究、筋力・身体計測のみ、疲労・遅発性筋痛関連、症例報告

Results(結果)

  • 82件の研究(ランナー5465人、平均30.6歳、女性61%)
  • 最も多かった障害:膝前部痛/PFPS(21.8%)、ITバンド症候群(18.4%)、アキレス腱障害(11.5%)
  • メタアナリシスに51研究(2395人)
  • バイオメカニクス変数:1010件(運動学的50.1%、運動力学的28.9%)
  • 唯一統計的に有意だったのは「股関節内転角」(SMD=0.57, 95%CI 0.21–0.94)で、障害あり群の方が高値
  • しかし、この結果は特定の研究グループによる2件の研究に強く影響されていた(44.9%の重み)

Discussion(考察)

股関節内転角の増加は、脛骨の異常荷重や腸脛靱帯への緊張を引き起こすとされ、障害リスクに関係する可能性がある。しかし他の変数(足関節背屈角、膝内旋角、踵外反速度など)では有意差はなし。
地面反力(GRF)も注目されたが、縦・前後方向のGRFにおいても、障害群と非障害群で統計的差は見られなかった。
研究方法の異質性(トレッドミル vs ランウェイ、シューズ vs 裸足、自己選択速度 vs 固定速度)や評価技術の差が、非一貫性の要因とされる。多くの研究はサンプルサイズが小さく(平均64名)、痛みがある状態で評価された例もあり、結果を混乱させる可能性がある。

Novelty compared to previous studies(先行研究との新規性)

過去のレビューは特定の傷害や変数に限定されていたが、本研究は包括的に多数のバイオメカニクス変数とランニング障害との関連性を評価した初めてのシステマティックレビューである。

Limitations(限界)

  • 評価条件やバイオメカニクス変数の定義にばらつきあり
  • 多くの研究は小規模で、観察条件も非標準的
  • 変数の名称・定義の一貫性がなく、解析困難
  • いくつかの研究は障害発症後に評価を行っており、因果関係の判断が困難

Potential Applications(応用可能性)

現時点では、バイオメカニクス変数の変化を基にした障害予防や治療への応用は限定的。今後は標準化された評価方法と、より多くの前向き研究が求められる。

 

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